まず理解しておかなければいけないのが、地方自治法244条に「公の施設」という規定があること。元々は地方自治法にはこの概念はなかったのです。それが昭和38年に新たに項目として追加されたもので、後から付け加えられた考え方なんですね。
その定義は、「住民の福祉を増進する目的をもって、その利用に供するための施設を設ける」、これを「公の施設」とする、としている。平等な利用、不当な差別的取り扱いの禁止を定めて、あくまで利用者、住民の立場に立った公共施設のあり方を規定しています。そして、その設置、管理、廃止は条例で定めるとしています。
これは、戦後の一時期、市民ホールなどの公共施設をつくって、たとえば市長や議会にコネのある業者がずっと占有しているなどといった状況があり得たんですね。そこで、政治と市民、企業との関わり合い方において、公共施設が平等にだれもが均等に使えるように、そして不当な差別的な使い方がないように、わざわざ昭和38年に追加された概念でもあるのです。そういう背景があって「公の施設」という規定が生まれました。
でも、すべての公共施設の、何から何までを自治体が公務員の手で管理・運営できるはずはないし、それはそれでたいへんなことになります。そこで管理委託という概念も法定されたんですね。これは、公的性格を帯びた主体に対しては自治体が管理運営業務を委託できる、と規定したもの。公的な性格を保持する主体とは、自治体が経営支配権を持つ第三セクターや公社・公団・財団を意味し、そういうところには管理委託が認められていたわけです。でも、どこにも企業、普通の法人ができるとは書いてなかった。
それが平成15年9月に法律が改正されて、法人その他の団体で地方公共団体が条例で指定するもの、すなわち企業やNPOにも管理運営の委託が認められることになり、これを指定管理者制度と呼んでいるんですね。
なぜこのようなニーズが起きてきたのか。それはやはり、規制緩和の中から生まれた議論なんですね。今まで、世の中が変わってきているのに法律が変わっていないがために何が起こっていたかというと、たとえば公民館をつくると、その運営のためにわざわざ第三セクターや外郭団体をつくって運営を委ねるようなことをしていた。費用的にも、関係性においても、必ずしも好ましくない状況が生まれていたのです。
そこで、段階的に民間事業者に委ねるような法律上の枠組みを構成せざるを得なくなってきた。「公の施設」という概念を残しつつ、そこに新しい概念をオーバーラップさせ、企業やNPOにも管理運営を委ねようということでできあがったのが、この指定管理者制度なんです。
平成15年9月に法律が改正され3年間の移行期間をもって、地方公共団体が直轄で自ら運営するか、あるいは原則公募に基づいて選定される指定管理者に委ねなさい、ということになりました。その二者択一になり、もう新たに外郭団体などをつくるということはなくなった。これが大きなポイントです。とはいえ、その2つの選択肢を認めながらも今、地方公共団体がわざわざ公務員を増やして直営でやるなんていうことは考えにくい。だから、ほとんどの地方公共団体が、指定管理者を指定して民間に委ねようとしているわけです。こうした大きな動きは、おそらく2006年の4月以降活発化して、指定管理者制度が全国の自治体において広範囲に実施されるという状況にあるのです。
官民関係が成熟化し、民間に委ねて創意工夫を発揮してもらったほうが、効率的でよい施設ができるという、時代の要請によって生まれた考え方なんですね。
いわゆる“平成の大合併”で今、自治体そのものの数が大幅に減ってきています。その分、ひとつの地方自治体がたくさんの公共施設を持つことになりますね。この国には、大小取り混ぜて膨大な数の「公の施設」があるんですね。民間にとってみれば、マーケットは広いし案件はいろいろあると言えます。
それに、地域の住民に密着した、住民サービスを提供するための施設ですので、なにも東京から大きな企業が出てきて仕事を取っていくものではない。地域のニーズ、住民のニーズ、地域にあった活用の仕方などをある程度把握していないと、おそらくよい管理・運営はできないと思います。そのあたりのことを正確にわかっているほうが、サービスの質を高めることができる。
単純に箱の管理をするだけだったらだれでもできるでしょう。でも、たとえば公民館や市民館など、その企画やプログラムまで行うとなるとどうでしょうか。企画を立て、いろんな機会を提供して住民に使ってもらう。NPOやNGOにも使ってもらうようにする。住民に対してプラスアルファで今までにないサービスを追加していく。そういったことは、施設の管理だけの話ではないですね。やはり地域の情報を正確に知っていて、その上で企画力や提案力があることが評価されるのです。